マッサージの手技の一つであるフリクション。
この記事では、フリクションの基本から効果、種類、注意点までを詳しく解説します。
施術を受ける方にも、施術を行う方にも役立つ情報満載です。
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フリクションとは?
フリクション、または強擦法は、マッサージセラピーにおいて重要な位置を占める手技です。
皮膚表面に圧を加え、一定のリズムで摩擦することで、様々な生理的効果をもたらします。この手技は、筋肉や軟部組織の緊張を緩和し、血行を促進する目的で広く用いられます。
また、フリクションは、他のマッサージ手技と組み合わせることで、相乗効果を発揮することが期待できます。例えば、エフルラージュで身体を温めた後にフリクションを行うことで、より深い組織へのアプローチが可能になります。
フリクションの定義と特徴

フリクションは、皮膚、皮下組織、筋肉などの深部組織に対して、摩擦力を加える手技です。その特徴は、一定の圧を維持しながら、リズミカルに摩擦を繰り返す点にあります。これにより、組織間の滑走性を高め、癒着を剥がす効果が期待できます。
フリクションは、他のマッサージ手技と比較して、より局所的で集中的なアプローチが可能です。そのため、特定のトリガーポイントや瘢痕組織の治療に有効です。また、フリクションは、血行促進効果が高く、組織への酸素供給を促すことで、自然治癒力を高める効果も期待できます。
フリクションは、施術者の指、手掌、肘などを用いて行われます。施術部位や目的によって、適切な部位を選択することが重要です。また、フリクションの種類も様々であり、円を描くように摩擦する手技や、直線的に摩擦する手技などがあります。
フリクションと他のマッサージ手技との違い
フリクションは、他のマッサージ手技と比較して、その目的と手技において明確な違いがあります。
例えば、エフルラージュは、皮膚表面を優しくなでるように行う手技であり、リラクゼーション効果や血行促進効果を目的とします。一方、フリクションは、より深い組織に圧を加え、摩擦力を利用して組織間の癒着を剥がしたり、筋肉の緊張を緩和したりすることを目的とします。
ペトリサージュは、筋肉を掴んで揉む手技であり、筋肉の緊張緩和や血行促進効果を目的とします。フリクションは、筋肉を揉むのではなく、摩擦することで組織を刺激するため、揉捏法とは異なります。
このように、フリクションは、他のマッサージ手技と比較して、より集中的で深い組織へのアプローチを可能にする手技です。
フリクションの4つの効果とメカニズム
フリクションは、その独特な手技によって、様々な生理的効果をもたらします。ここでは、フリクションの代表的な4つの効果と、そのメカニズムについて解説します。
フリクションは、血行促進、筋肉の緊張緩和、鎮痛効果、組織間の癒着剥離といった効果が期待できます。これらの効果は、単独で現れるだけでなく、相互に影響し合いながら、クライアントの身体に好影響を与えます。施術者は、これらの効果を理解した上で、クライアントの状態に合わせて、最適なフリクション手技を選択し、施術を行います。
フリクションは、単なるリラクゼーションだけでなく、様々な症状の改善やパフォーマンス向上に役立つ可能性を秘めた、非常に有用な手技です。
血行促進と代謝アップ
フリクションは、皮膚や筋肉に摩擦を加えることで、血管を拡張させ、血行を促進する効果があります。血行が促進されると、組織への酸素や栄養素の供給が増加し、老廃物の排出が促されます。これにより、細胞の活性化が促進され、代謝が向上します。
血行促進効果は、冷え性の改善や疲労回復に役立ちます。また、筋肉への酸素供給が増加することで、筋肉の柔軟性が向上し、運動パフォーマンスの向上にも繋がります。
フリクションによる血行促進は、単に血管を拡張させるだけでなく、血管内皮細胞を刺激し、一酸化窒素(NO)の産生を促す効果もあります。一酸化窒素は、血管拡張作用を持つだけでなく、抗炎症作用や抗血栓作用も有しており、血行促進効果をさらに高めます。
このように、フリクションは、血行促進と代謝アップを促し、身体の様々な機能改善に貢献します。
筋肉の緊張緩和と柔軟性向上
フリクションは、筋肉や筋膜に対して直接的に働きかけ、緊張を緩和し、柔軟性を向上させる効果があります。筋肉の緊張は、長時間のデスクワークやストレス、不適切な姿勢などによって引き起こされます。緊張した筋肉は、血行不良や痛みを引き起こし、身体の不調に繋がることがあります。
フリクションは、筋肉を摩擦することで、筋肉内の血行を促進し、筋肉の緊張を緩和します。また、筋膜の癒着を剥がすことで、筋肉の可動域を広げ、柔軟性を向上させます。
筋肉の緊張緩和と柔軟性向上は、肩こりや腰痛の改善に役立ちます。また、スポーツにおける怪我の予防やパフォーマンス向上にも繋がります。
フリクションは、筋肉の固有受容器を刺激し、神経系の働きを調整する効果もあります。これにより、筋肉の過剰な緊張を抑制し、リラックス効果を高めます。
鎮痛効果と免疫力向上
フリクションは、痛みを緩和する鎮痛効果と、免疫力を向上させる効果が期待できます。痛みの原因は様々ですが、筋肉の緊張や炎症、神経の圧迫などが考えられます。フリクションは、これらの原因に対して総合的に働きかけ、痛みを緩和します。
フリクションは、痛みを伝える神経経路を遮断する効果があります。また、エンドルフィンなどの内因性鎮痛物質の分泌を促し、痛みを和らげます。
免疫力向上効果は、血行促進とリンパの流れを改善することによってもたらされます。リンパ球は、免疫機能において重要な役割を果たしており、リンパの流れが改善されることで、免疫細胞の活性化が促されます。
フリクションは、ストレスを軽減し、自律神経のバランスを整える効果もあります。ストレスは、免疫力を低下させる原因の一つであり、フリクションによってストレスが軽減されることで、免疫力の向上が期待できます。
組織間の癒着を剥がす
フリクションは、組織間の癒着を剥がす効果があります。癒着とは、本来は分離しているべき組織同士が、炎症や外傷などによってくっついてしまう状態のことです。癒着は、痛みや可動域制限の原因となり、日常生活に支障をきたすことがあります。
フリクションは、癒着した組織に対して摩擦力を加えることで、癒着を剥がし、組織の滑走性を回復させます。これにより、痛みや可動域制限を改善することができます。
フリクションは、瘢痕組織の治療にも有効です。瘢痕組織は、外傷や手術などによって生じた組織であり、周囲の組織との癒着を引き起こすことがあります。フリクションは、瘢痕組織を柔らかくし、周囲の組織との癒着を剥がすことで、痛みを緩和し、可動域を改善します。
フリクションは、慢性的な痛みの原因となるトリガーポイントの治療にも応用できます。トリガーポイントは、筋肉内に形成された硬いしこりであり、周囲の組織との癒着を引き起こすことがあります。フリクションは、トリガーポイントを直接的に刺激し、癒着を剥がすことで、痛みを緩和します。
フリクションの種類と手技

フリクションには、様々な種類と手技があります。ここでは、代表的なフリクションの種類と手技について解説します。施術者は、クライアントの状態や目的に合わせて、適切な種類と手技を選択する必要があります。
フリクションの手技は、圧の強さ、リズム、施術部位などによって細かく分類されます。また、施術者の体格や経験によっても、手技のバリエーションは異なります。
フリクションは、単独で行われるだけでなく、他のマッサージ手技と組み合わせて行われることもあります。例えば、軽擦法で身体を温めた後にフリクションを行うことで、より深い組織へのアプローチが可能になります。
円を描くフリクション
円を描くフリクションは、指先や手掌を使って、皮膚表面に円を描くように摩擦する手技です。この手技は、比較的広い範囲の組織に対して、穏やかな刺激を与えることができます。血行促進効果が高く、筋肉の緊張緩和や痛みの緩和に役立ちます。また、リラクゼーション効果も期待できます。
主に肩や背中、腰など、広い範囲の筋肉に対して効果的で、関節周囲の組織の柔軟性を高める効果も期待でき、施術の最初や最後に行うことが多いです。
直線的なフリクション
直線的なフリクションは、指先や手掌を使って、皮膚表面を直線的に摩擦する手技です。この手技は、より局所的な組織に対して、集中的な刺激を与えることができます。組織間の癒着を剥がす効果が高く、瘢痕組織やトリガーポイントの治療に有効です。また、筋肉の緊張を緩和し、柔軟性を向上させる効果も期待できます。
主に腱や靭帯、筋肉の走行に沿って行うことで、より効果を発揮します。また、痛みの原因となっている部位を特定し、集中的に施術することで、鎮痛効果を高めることができます。
肘を使ったフリクション
肘を使ったフリクションは、肘頭や肘の内側を使って、皮膚表面を摩擦する手技です。この手技は、施術者の体重を利用して、より強い圧を加えることができるため、深い組織へのアプローチに適しています。筋肉の緊張が非常に強い場合や、組織間の癒着が高度な場合に有効です。
主に背中や腰、臀部など、広い範囲の筋肉に対して効果的で、大腿部の筋肉など、厚みのある筋肉に対しても有効です。

